コラム

 公開日: 2014-11-17  最終更新日: 2015-01-15

企業の義務としてのメンタルヘルスケア~最高裁判例から法制化へ~

 労働安全衛生法の改正により、2015年12月から労働者に対するストレスチェックが企業に義務付けられることになりました。労働者の精神障害を予防するために、企業に対してメンタルヘルスケアの取り組みが更に求められる時代になっています。

 企業が取り組むべきメンタルヘルスケアについては、厚生労働省が2006年に策定した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、4つのケアの必要性が示されています。ストレスについて労働者が自ら把握・予防・対処する『セルフケア』、管理監督者による職場環境の改善・メンタル不調者への対処である『ラインケア』、『産業医や企業内保健スタッフによるケア』、『外部の専門機関を活用したケア』という4つのステップです。
しかし、このような労働者に対するメンタルヘルスケアは、そもそも企業に課された義務なのでしょうか。


 企業の義務としてのメンタルヘルスケアを考える上で留意しておきたいのが、2000年の電通事件最高裁判決です。この事案は、慢性的な長時間労働に従事していた労働者がうつ病を患い、自殺するに至った責任は会社側にあるとして、遺族である両親が会社に対して損害賠償を請求したというものです。最終的に、会社が約1億6,800万円を賠償することで和解が成立しています。

 この判決のポイントとして先ず挙げられるのは、長時間労働と自殺との因果関係を明確に認めた点です。長時間労働が原因でうつ病を患い、そのうつ病が原因で自殺に至った場合、本人の判断能力に関係なく因果関係ありとされました。

 もう一つの重要なポイントは、使用者及び管理監督者は、労働者の心の健康に対する注意義務を負うとされ、その義務違反が認められた点です。使用者は労働者に対し、業務の遂行に伴う疲労やストレスが過度に蓄積し、労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負います。また管理監督者についても、この注意義務の内容に従って、労働者に対し指揮監督を行うべきと示されました。
 そしてこの事案においては、管理監督者である上司について、労働者が著しい長時間労働に従事していること、それにより心身の健康が悪化していることを認識しながら対処を怠ったとして、会社の注意義務違反を認めています。


 上記の判例からもわかるように、労働者に対するメンタルヘルスケアを使用者・管理監督者に課された義務として、企業はきちんと捉えなければなりません。実際、この企業の義務については、今まで法律として具体的に規定されていた訳ではありませんでしたが、今回労働者に対するストレスチェックの義務化というかたちで法制化されるに至っています。このような流れの中で、労働者が精神疾患を抱えることによる法的リスクを企業は改めて認識し、労働者の心の病を防止する取り組みを進めていく必要があるでしょう。


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