障がい者雇用・在宅勤務制度に強い社会保険労務士
コラム
公開日: 2015-03-09
企業の懲戒処分の有効性~就業規則と要件~
言葉によるセクシュアル・ハラスメントを繰り返した社員に対する会社の懲戒処分の有効性が争われた訴訟で、先月最高裁は「会社の懲戒処分は妥当」とする判断を下しました。
部下である女性社員に対し、上司である男性社員により繰り返し行われたセクハラ行為。それを理由とした会社側の出勤停止及び降格処分について、処分を受けた男性社員が無効確認を求めていた事案です。
今回の判決は、セクハラ行為に対する懲戒処分の妥当性について最高裁まで争われたことで大変注目されましたが、そもそも懲戒処分の有効性は、何をもって判断されるのでしょうか。
■企業秩序を維持する権限と遵守する義務
企業は、事業を円滑に運営するために、経営上必要とされる企業秩序を維持する権限を有しています。一方労働者には、労働契約の締結により企業秩序を遵守する義務が課されています。
労働者に企業秩序に反する行為があった場合、この企業秩序を維持するために、企業はその労働者に懲戒を課すことができるとされています。即ち懲戒処分とは、労働者の違反行為に対する制裁罰なのです。
ただし、権利の濫用を防ぐために、解雇権と同様に企業の懲戒権は判例により制限がなされていますので留意が必要です。
■就業規則への明記が絶対条件
懲戒処分の有効性が認められる絶対条件として、就業規則において懲戒規定が明確に定められていることが求められます。
必要とされる定めの一つが「懲戒の種別」。譴責・減給・出勤停止・懲戒解雇など、処分の種別が列挙されていなければなりません。
もう一つは「懲戒の事由」。懲戒の対象となる具体的な労働者の行為についても、あらかじめ明記されている必要があります。
企業の懲戒処分は、就業規則にこのような根拠が存在しなければ無効とされるのです。
■懲戒の有効要件
就業規則に懲戒規定が明記されていることを前提として、労働契約法では更に二つの懲戒要件が示されています。
一つ目は、懲戒処分に「客観的に合理的な理由」が存在すること。企業秩序に反する労働者の具体的な行為が、就業規則上の懲戒事由に該当するものであるかということです。
二つ目の要件は、その懲戒処分の「社会通念上の相当性」。たとえ労働者の行為が懲戒事由に該当していたとしても、その処分が社会的に見て重すぎるものではないか。また、処分に至るまでの経緯、手続きは適正であるかが問われることになります。
冒頭で挙げた裁判のように、企業経営においては、労働者に対し懲戒権を行使せざるをえない場面は少なからず訪れます。企業としては、まず就業規則を整備しておくこと。そして、懲戒処分を行うまでの慎重な検討が求められていると言えるでしょう。
このテーマについては、時事問題解説サイト『JIJICO』にも寄稿しています。
「セクハラ処分厳格化、働き手の意識改革が急務」
http://jijico.mbp-japan.com/2015/03/09/articles16575.html
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