コラム

 公開日: 2015-11-13  最終更新日: 2016-01-13

発達障害者雇用マニュアル~障害特性、就労上の課題と雇用管理~

発達障害とは?~一般的な障害特性を理解する~

発達障害とは、通常低年齢において症状が発現する脳機能の障害のことをいい、自閉症スペクトラム(自閉症・アスペルガー症候群)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などがあります。アスペルガー症候群は、高機能自閉症とも呼ばれます。

【自閉症スペクトラム(自閉症・アスペルガー症候群)】
自閉症スペクトラムは、「社会性の障害」、「想像力の障害」、「コミュニケーションの障害」という3つの一般的特徴を持つと言われています。

(1)社会性の障害
社会的行動や対人関係の構築に困難を抱えていることを言い、以下のような例が挙げられます。
●暗黙のルールや常識を直感的に理解できない
●集団行動が難しい
●場の空気を読めないことがある
●社会的階層の理解が難しい

(2)想像力の障害(パターン化した思考・行動)
思考に広がりがない、反復的・常同的な行動を示す等の特徴があります。
●こだわりが強い反面、変化に対する対応が苦手
●関心のあることには集中する一方、関心のないことには極端な無関心を示すことがある

(3)コミュニケーションの障害
使用する言葉の適切な選択、相手の言葉の適切な理解に困難性が見られることがあります。
●あいまいな表現、比喩的な表現の理解が苦手
●相手や場に応じた会話を適切に選択することが難しい
●例え話や冗談などを言葉どおりに受け取ってしまう


【学習障害】
全体的には知的発達の遅れがないにも関わらず、読み書きの能力や計算能力等の学習能力に部分的な障害を有しています。


【注意欠陥多動性障害】
注意散漫といった「不注意」、落ち着きがないといった「多動性」、後先を考えない行動といった「衝動性」という特徴を有します。ただ多くの場合、年齢の経過とともに見かけ上は多動性が減少していきます。


【障害特性に起因する発達障がい者全般の特徴】
「二次障害」
上述した障害特性に起因する失敗体験の累積から、うつ病などの二次障害を抱えているケースがあります。

「生きづらさ・疎外感」
障害特性が原因となり、本人に悪意は無いにも関わらず周囲から誤解を受けたり、反感を持たれてしまうことがあります。このような経験から、発達障害のある方は生きづらさや疎外感を抱えていることが多くあり、共に働く上でもきちんと理解しておきたいところです。

発達障がい者の就労上の課題

あくまでも一般的傾向ですが、障害特性から導かれるものとして、下記のような就労上の課題が挙げられます。

(1)「社会性の障害」に起因する課題
◆職場における暗黙のルールや常識を理解することが難しい
◆チーム単位での業務遂行が苦手
◆敬語の使用など上司、同僚といった立場の違いに応じた対応が不得手

(2)「想像力の障害」に起因する課題
◆作業手順、作業方法や予定の変更があると混乱することがある
◆仕事の段取りや優先順位を考えることが苦手
◆同時に複数の仕事を進めることが難しい

(3)「コミュニケーションの障害」に起因する課題
◆言葉のみによる指示、抽象的な指示の理解に難がある
◆仕事で分からないことがあっても、質問したり助けを求めたりできない

発達障がい者の雇用管理

【指示出し、コミュニケーションのポイント】
(1)「当然理解しているだろう」という仮定を持たない
発達障がい者は職場における暗黙のルール、集団行動における常識、上司と部下の関係性などの理解が難しい傾向があります。このため、コミュニケーションにおいては『社会性』に障害があることを前提に対応します。また、本人が理解できていないことについては一つひとつ説明・指導を行う姿勢が必要です。

(2)明確に、具体的に指示する
曖昧な指示、抽象的な説明、比喩的な表現の理解が難しい傾向があります。このため、指示や説明は極力明確に、また具体的に行うことがポイントです。

(3)予定に変更が生じる際は要注意
作業方法や業務の予定に急な変更があると混乱してしまうことがあります。突発的な変更は避け、変更内容や変更する理由をあらかじめ丁寧に説明することを心がけます。


【手順・時間の構造化による業務管理】
(1)作業・業務マニュアルの作成(手順の構造化)
発達障がい者は口頭指示のみでは理解が難しいことがあり、また、作業方法や手順を考えることも苦手とする傾向があります。このため、作業マニュアル等を整備することにより作業の目的、作業手順や方法、何をもって作業完了とするかという最終的な成果について、書面や図で視覚化することが業務管理の基本です。

(2)予定表・工程表の作成(時間の構造化)
仕事のスケジュールを組む、優先順位を決めるということを苦手とする傾向があります。また、臨機応変な対応が難しいことから、予定が示されないと強い不安感を抱き、ストレスを抱えてしまうこともあります。1日単位の作業予定表や、1週間単位の工程表等を作成し、時間的な見通しを持たせることもポイントの一つです。

(3)進捗管理
「パターン化した思考・行動」という障害特性の裏返しで、高い集中力を持っている傾向も見られます。集中力があるのは良いことではありますが、集中力が高いがために休息も取らずに作業をし続けてしまうような場合は注意が必要です。頑張っているからといってそのまま見過ごしてしまうと、本人に自覚のないままストレスや疲労を抱え込むこともあります。日々の業務における進捗についても、適切に関与していくことが必要です。

障がい者をケアする社員をケアする

障がい者雇用を進める上で留意しておきたいことは、障害のある社員に対する対応だけではなく、障害のある社員の教育・指導・業務管理・相談を担当する「障がい者をケアする社員」に対するサポートが重要であることです。
障害のある社員の担当を任されると、教育・指導が思うようにいかない、障害のある社員から相談を受けてもどう対応すればよいのかわからないといったことに悩み、大きなストレスを抱え込むことがあります。下記に列挙したポイントを念頭に担当社員を適切にサポートし、負担の集中を回避する必要があります。

◆担当者を一人だけとすることは避け、複数の社員を配置し、チームで対応できるようにする。
◆元々従事していた業務と障がい者担当を兼ねる場合、元々の業務の業務量の調整などの配慮や負担軽減措置が必要。
◆会社は、障害のある社員に対する教育・指導に対しては長期的視点を持ち、担当者に対しても成果のスピードを過度に求めすぎない。

障害名に囚われすぎない

ここまで発達障害の特性、発達障がい者の就労上の課題と雇用管理について見てきました。障がい者雇用に取り組む上では、障害特性の理解や雇用管理手法の知識を深めることが必要なことは言うまでもありません。
しかしながら、障害名や知識として持っている障害特性にあまりにも囚われすぎてしまうと、障害のある社員個々の人間性・パーソナリティに対する理解が阻害され、誤った対応に繋がりかねません。一般的傾向としての障害特性の理解を前提としつつもそれにミスリードされることなく、障害のある個々の社員その人自身をよく見ることが何よりも重要であると言えるでしょう。


関連コラム:「精神障がい者の雇用義務化に向けて」

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