コラム

 公開日: 2013-04-03 

不動産侵奪罪?

 

  気が付けば4月に入ってしまっていました。
  
  だんだんと更新期間が空いてきており(汗)、このまま更新しなくなるのではないかと自分のことながら危惧しておりました。一部マニアな方々、お待たせしました。

  散歩が気持良い季節です。

  この季節になると、徒歩通勤が楽しいです。片道30分ほどですが、運動を兼ねて毎日徒歩で通勤しています。

  先日、ある月極駐車場の前を通りかかると、

  「ペットに糞させるな!させた場合、『不動産侵奪罪』で告訴します」

  というような貼紙がしてありました。

  告訴とは穏やかでありませんが、それよりも目が行ったのは「不動産侵奪罪」の方です。
  不動産侵奪罪は、刑法235条の2に規定されている犯罪です。 


  刑法235条の2 
   他人の不動産を侵奪した者は、10年以下の懲役に処する。

  
  もう10年以上前になる受験時代以来、この条文を読んだのは初めてです。

  さて貼紙に関してですが、ペットにフンをさせると不動産侵奪罪に当たるのか?
  
  駐車場(つまり、土地の上には建物がない、更地ですね)は、当然「他人の不動産」に当たりますから、問題はペットにフンをさせる行為が「侵奪」に当たるかどうかということになります。

  ここで「侵奪」とは、「他人の占有を排除してその不動産に自己または第三者の占有を設定すること」をいいます、いささか乱暴に言えば、要は不動産を自己の支配下に置くことと考えてよいでしょう。
 
  刑法の教科書などでは、例として、土地の上に恒久的建造物を構築する行為、囲壁を設置して監視する行為、境界線を移動させて隣地を取り込む行為などがあげられています。また、アパートの一室を占拠するなど、土地・建物の全体に占有を及ぼす必要もないとされています(大谷實「刑法講義各論」より。私が大学時代のものなので、第四版を参照しているのですが(笑)、特に問題はないと思います)。

  また過去の裁判例では、他人の土地を無断で耕耘(こううん)、つまり耕して苗床を造り、播種(はしゅ)、つまり種をまいたりしたときは本罪に当たるとされたもの(新潟地裁相川支部昭和38年1月10日判決)とか、他人の土地を掘削し、その土砂を搬出したうえ、その跡地に残土やコンクリート片等の廃棄物を投棄する行為が本罪に当たるとされたものがあります(大阪高裁昭和58年8月26日判決)。


  さてさて、そうすると、ペットにフンをさせて「侵奪」に当たるのかどうか・・・?


  上記の教科書の説明や、過去の裁判例から判断するに、普通にフンをした(させた)程度では、侵奪に当たらないと考えるのが合理的でしょうね。
  いくら一部でも侵奪が成立すると言っても、普通にペットがフンをした程度で(もちろん、ペットの種類によってフンの大きさも違うのでしょうが一般的なペットであればそんなには)、侵奪に当たると考えるのは行き過ぎでしょうし、そもそもフンをすることが、「自己の支配下におく」と言えるかどうか・・

  もちろん、それが物凄い量であれば(汚くてすいません)、別なんでしょうけどね(重ねてすみません)。


  ということで、結論としては、くだんの貼紙が言うような不動産侵奪罪は成立しないであろう、となります。

  もちろん、他人の土地でペットにフンをさせるのは法律以前のマナーの問題として良くありません。また最終的に不動産侵奪罪とはならなくとも、「告訴」することは妨げられませんし、迷惑防止条例等の法令に当たる可能性はあります。トラブルのもとですので、ペットを飼われている方はゆめゆめご注意ください。

  

  

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