コラム

 公開日: 2013-04-18  最終更新日: 2013-08-06

起立!宣誓

  また訳のわからないタイトルだなと思った皆さん、こんにちは。弁護士の秋田です。

  普段の弁護士業務で素朴に感じたことを綴る身近な法律問題のテーマ、今回もマニアックなお話です。



  あなたが民事裁判で、証人(本人でも基本的に同じなんですが)として証言することになったとします。

  法廷に立ったあなたは、まず裁判官から、名前等の確認を受けるでしょう。そして、宣誓書という紙を渡され、それを読み上げるように言われます。
    
  あなたが宣誓書を読もうとすると、おそらくは、裁判所書記官が「ご起立願います」と傍聴席や弁護士を含めた法廷内の皆に起立を促します。
   
  結果、あなたが「良心に従って本当のことを申します。ないことを申したりなどは決して致しません・・・・」などと宣誓書を読み上げるのを、法廷内の皆(裁判官を含む)は起立した状態で聞いていることになります・・・・・

  
  民事裁判における証人尋問の手続は、大体このような流れで行われます。
 
  この流れは、単なる慣行ではなく、当然ですが法律-民事訴訟法及び民事訴訟規則-に則ったものです。

  具体的には、民事訴訟法201条、民事訴訟規則112条あたりになるのですが、細かな話はおいておくとして、本日のテーマは「起立する」というところについてです。

  この起立するという点については、民事訴訟規則112条2項に規定がありまして、

   「宣誓は、起立して厳粛に行わなければならない。」

  となっています。

  これがあるがゆえに、傍聴席まで含めた法廷内の全員が起立をするよう求められる訳です。

  私は弁護士になってから、数多くの尋問をこなしてきましたが、ほぼ全ての尋問手続で、宣誓の際には起立していました。

  なので、宣誓の際には起立をするのが当然だと思っていました。

  ところが、最近行った2件の尋問の際は、証人以外には起立を求められず、したがって私や傍聴人は着席したまま証人の宣誓を聞いていました。

  「??」と思ったので、ちょっと調べてみることにしました。
 
  そもそも、なぜ起立をしなければならないのでしょうか?
  いいかえれば、前述の民事訴訟規則112条2項の立法趣旨は何なんでしょうか?
  そして、起立をしなければならない者は誰なのでしょうか?(厳密に言えば、112条2項には起立すべき者が誰なのかは書かれていません)

  とりあえず、何冊かの民事訴訟法の体系書(いわゆる基本書と言われる、法学部で教科書とされるような書物ですね)に当たってみたのですが、ほとんどの体系書は、そもそも宣誓の際に起立が必要なことさえ書かれていませんでした(笑。もしあなたのお手元に民事訴訟法の教科書があれば、試しに調べてみてください)。
  唯一、新堂幸司先生の新民事訴訟法(第5版)には触れられていましたが(633頁)、上記の問の答えについては書かれていませんでした。
  マニアックというか、あまり重要でない問題ということでしょうね。
  
  ですがそうなるとなおさら気になります。

  そこで次に、コンメンタール(つまり、逐条解説書)を当たってみたところ、さすがに書いてありました。

  「宣誓は、起立して厳粛に行わなければならない。起立する者の範囲は法廷内の全員であると解され、実務も同様である」(弘文堂「条解民事訴訟法」第2版1110頁より)。

  やはり、法廷内の全員と考えるのが一般的なのですね。
  しかし、「解され」とあるように、これはあくまでも「解釈」ですから、当然、別の解釈もありうることになります。

  例えば「起立の対象者はあくまでも宣誓をする証人だけで足りる」という解釈とか、あるいは「証人本人と、両当事者(代理人弁護士)、裁判官のみで、傍聴席の者までは起立しなくともよい」とかの解釈も、一応成り立つでしょう。
  
  ところで、上記のコンメンタールにも、112条2項の立法趣旨までは書かれていませんでした。
  やはりマニアックな問題なのか・・・私もこれまで深く考えたことがなく、単なる儀式的なものかな?程度の認識でした。
  ですが、儀式を法律にするというのも違和感があります。
  
  ということで別のコンメンタールにも当たってみたところ、ありました。長くなるので要点のみ抜粋しますと

  「証人は多くの場合、当事者の一方と親交があり・・・・訴訟の結果が証人自身の利害に影響する場合もある・・・そこで裁判所は、起立を命じ、静粛のうちに証人に宣誓書を朗読させ・・・証人に嘘を言い難くしようとするのである」「規則の文言上は、起立する者の範囲は明確ではなく、証人のみでもよいとも解されるが、起立をさせる趣旨からすると、法廷内の全員であると解するのが相当」(日本評論社「コンメンタール民事訴訟法Ⅳ」217頁より)。

  さらに実務書に当たってみると、もっと端的に書いてありました。

  「宣誓は、起立して厳粛に行う。証人に虚偽の陳述をし難い心理的作用を期待したものである。起立する者の範囲は、傍聴人を含めた法廷内の全員が想定されている。ただし、実務上は、まちまちである。結局は、裁判長の訴訟指揮の範囲に属する事柄と解すべきであろう」」(青林書院「民事証拠法体系 第3巻」24頁より)       

  ・・・・つまり、起立するのは、証人に「ウソをつくなよ!」というプレッシャーを与えるためであり、そのため法廷内の全員が起立することが多いが、結局は裁判長の気分次第ということですね(いささか乱暴な訳ですが、要はそういうことです)。
 
  なるほどなあ。勉強になりました。


  ただ、実際には証人として出廷される方は、基本的に緊張しておられますから、手元の宣誓書を読むのに精一杯で、周りの人が起立していること自体、認識していないような気が・・・・起立しているこちらも、先に書いたように儀式的な感覚で立っているので、それが果たしてプレッシャーになるのか・・・つまり、法が求めている効果は上がっていない気がします。

  そうすると、裁判官が、そのような(効果がない)ことをわざわざする必要もないと考えるのも、合理的といえば合理的なのかもしれません。

 ということで、もしあなたが宣誓書を読む機会がありましたら、周りが起立しているかどうか、ちょっと確認してみてください。そして、このコラムのことを思い出していただいたら、緊張がほぐれるかもしれませんよ。  

 そして私は、次回の証人尋問で起立した際には、法の趣旨を全うすべく、宣誓書を読み上げる証人を、心の中で、「ウソをつくなよ!」と思いながら、凝視させていただこうと思います。あ、もちろん、敵方の証人の場合のみですが(笑)。





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